第23章 止まり木
影山 side
…いい感じだ。
最初のトスを上げた時にそう思った。指の先の感覚がいつもより鮮明で、ボールが手に吸い付く感じがする。
「………」
月島に上げようと考えていたトスを、ギリギリでツーに切り替えてみた。
トンッ…
やっぱりいい感じだ。
「ナイス影山!」
朝食った物が腹に無くなった感じがする。
でもまだ腹は空かない。
指先だけじゃなくて身体もいつもよりよく動くし、周りの動きもよく見える。自分の調子の良いことが、自分でわかる。
他の人もそうだ、バーベキュー効果か?
日向の調子も良い。
無駄な動きもミスも少ない。
今なら新しい速攻が使えるかもしれない。
「ノヤっさん、ナイスレシーブ!」
「綺麗にセッターに返るぞ!」
「!」
──日向の助走が早い、まさかやる気か?
…でも、今ミスをすればチームの良い空気を崩すかもしれない。新しい速攻はもっと成功率をあげてからに……
「やんねーの?」
そう聞こえた気がして、日向を見ると目が合った。
──「チビちゃんの欲しいトスに100%応えているか、応える努力をしたのか」
──『信じてね』
「……………」
俺は、日向に新しいトスを上げた。