第23章 止まり木
『「………」』
この合宿で重ねた自主練の様子が頭に浮かんでくる。
何度も何度も繰り返される飛雄のトスは、いつも恐ろしいくらいに丁寧だった。数をこなすことが目的ではなく、1回1回にしっかりと意味が存在していて本当に有意義な時間だったと思う。
その中で、悔しさからくる舌打ちやため息を私は何度聞いたことだろう。だけどその数だけ、飛雄はきっと前に進み…悩み続けた自分をきちんと “過去” にした。
どんなに上手くいかなくても、いくら失敗しても、諦めて投げ出すことなく真摯に向き合う姿は、この上なくカッコよくて…とても誇らしかった。
ああ、この人はそういう人だった。
この人は、努力の出来る天才だった。
…そう、改めて思い知らされた。
あの日、神社で交わした言葉が蘇る。
──『努力の出来る天才は最強なんだから』
──「……俺がか?」
──『この私が言ってるんだから、間違いない』
──「ふはっ…お前が言うと、そんな気がしてくるのがすげえ」
ね?間違いなかったでしょ?
だって、この私が言ったんだもん。
飛雄は大丈夫、絶対に大丈夫。
飛雄の “思い通りのバレー” は、
このみんなとならきっと叶うから。
もう飛雄は独りにはならないから、
だから、
仲間のことを、
私の言葉を、
そして何より自分のことを、
『信じてね』
「…………」
こくりと静かに頷いた飛雄の横を通って私は審判台に上がった。