第23章 止まり木
合宿最後の試合を前に、烏野メンバーは心が折れかけていた。
「くそっ!最後まで負け通しかよ…!」
田中先輩の悔しそうな声に反応する元気もない様子のみんなは、体育館の床に膝をついて呼吸を荒らげている。
そんな中、澤村先輩だけがスッと立ち上がった。
「お前ら頑張れ…生き残るんだ…」
「…大地さん?」
遠くを見つめる澤村先輩に、みんなは注目した。
「…これは、偶然聞いた話だから黙っておくべきかと思ったんだが…」
「な、なんスか…!?」
「この練習試合、全部終わったら…
監督たちのオゴリでバーベキューらしいぞ」
「バー」
「べ」
「キューッ!?」
グワッと立ち上がった先輩2人と日向くんは、さっきまでの疲労が嘘みたいに謎のお肉ダンスを踊り始めた。そして、その近くでヨダレを垂らしながらソワソワと動き出す飛雄。
4人の奇行にツッキーは呆れてため息をついた。
「…ちょっと恥ずかしいんだけど」
『でもツッキー、バーベキューだって』
「だから何」
『お肉だよお肉…楽しみだね』
「は?こんな暑い中、外で食べるなんて地獄じゃん」
『は?それがいいんじゃん!』
「…暑くて頭がバカになったんじゃない?」
『今テストやっても負けない自信があります』
「……ムカつく」
「よーしお前ら!」
コーチの声がけで私たちは集合した。
「とにかくお前らがやろうとしてる新しいこと、一発でも気持ち良く決めてこい」
「「「オス!」」」
「…結局ペナルティ三昧の合宿だけど、最初の遠征から比べたら、みんな何かしら変わってるはずだ」
みんなの顔つきが変わった。
「ここらで一発気持ち良く勝って、ウマイ肉を食おうぜ!」
「「「おおっしゃあああ!!!」」」
「鈴木、お前審判入れるな?」
『はい』
「んじゃ、頼むわ」
『はい、いってきます!』
審判台に向かう途中で、ふいに飛雄と目が合った。