第23章 止まり木
黒尾 side
覗き見なんてお世辞にも趣味が良いとは言えないが、つい見入ってしまった。
手ェ握ってたんだよな…向かい合って。
見るからに “ただの同級生” ではないその空気感に俺は息を飲んだ。
そんですげえ楽しそうに笑う鈴木さんを見て、俺は何故か嫉妬した。
2人はまあまあな時間そうしてたと思う。気付かない振りをして割って入ろうと思えば入れたのかもしれないけど、あの時の俺にそれをする勇気はなかった。
鈴木さんが立ち去って俺と2人になってからも、影山は特に表情を変えることはなかった。探り入れるようなことを言っても、眉ひとつ動かしゃしねえし、徹底したポーカーフェイスっぷりだと思った。…俺が見ていたことには気付いたはずなのに。
鈴木さんは男女関係なくフレンドリーなタイプだし、今のを見たってなんとも思わねえヤツが大半だと思う。
ただ、
自販機前でのこと、
赤葦とのこと、
食堂でのこと、
今目の前で起きたこと…
こんだけ色々見せられて、
2人の間になんもねえって
…そんなの絶対ェ嘘だろ。
「クソッ……なんなんだよ」
「…そうだね、マネージャーもペナルティに参加させるなんて考えらんないよね」
真隣から聞こえた声に俺は猫のように飛び上がった。
「うおっ!?研磨!?」
「…なに?俺ずっとここにいたじゃん」
「ありゃ、そーだった?」
「そうだよ」
「ハハッ、わりィわりィ」
「クロ、そろそろ次の試合始まる」
「ん、行くか」
「それと…あんなに見つめられたら、そろそろあの子に穴が開くと思う」
「!」
バッと隣を見た時には、研磨はもう歩き出していた。
「…ったく敵わねーな、研磨には」
俺は小さく息を吐いてその背中を追った。