第23章 止まり木
黒尾 side
「うお!烏野のチビちゃんがめっちゃフライング上手くなってる!」
「チビちゃんって!夜久さんと日向、あんま身長変わらないじゃないですかあ!…アグァッ!」
思ったけど、思ったけどもな…
「今のは擁護できない」
「夜久さんに身長の話はタブーだと言ったのにバカめ」
「鈴木ーッ!!来ォーい!!」
フライングをしながら、烏野のリベロくんが突然声を張り上げて鈴木さんを呼んだ。
『はい!?』
「こっからエンドラインまでお前もフライングな!」
『は、はいっ!』
タタッと走ってやってきた鈴木さんは、リベロくんの横について床に飛び込んだ。
「おっ…」
「すげえ、鈴木さんも上達してる!」
「前回はお腹打って死にそうな顔してたのにな」
他のヤツらから数分遅れて無事にエンドラインに辿り着いた鈴木さんは2、3年からよくやったと声を掛けられていた。
そのまましばらく観察していると、鈴木さんは歩き出した影山の前にぐるりと回り込んでピースサインを突き出した。そんな鈴木さんをチラッと見た影山は、ボソリと何かを呟いて自分のタオルを彼女の顔に押し付けて立ち去った。
そのまま影山のタオルを何の躊躇いもなく平然と使う鈴木さん。俺はその姿に驚愕した。
「……おいおい、」
男の汗拭いたタオルだぞ、それ。
ふと頭には、あの夜の光景が思い浮かんだ。