第5章 第二体育館の烏たち
影山 side
美里に相談してから数日後の放課後、俺は日向と体育館の脇でいつも通りレシーブ練習をしていた。
「手だけになるな!足動かせ!」
朝練の時、俺はこいつに初めてトスを上げた。
こいつのボールへの執着心は、俺がこれまで共にバレーをしてきたヤツらと比べて段違いに強い。そしてそれと同じくらい、勝つことへのそれも強かった。
俺がトスを上げる直前、美里の言葉が頭に浮かんだ。
──『その人にさ、飛雄が一緒に勝とうなって心から言えたらそれは仲間の第一歩なんじゃない?』
──…おい、土曜日、勝つぞ
それなのに目の前のこいつ、全然集中してねえ!
「ボェーッ!?」
「おいもっと集中しろ!3対3明日なんだぞ!」
「わっ、わかってるよ!明日勝って、体育館入れてもらって、ちゃんと部活始めんだ!」
そうだ、バレーやりに高校来てんのに入部出来ねえとか話になんねえ。
「あっ、あとお前は勝たなきゃセッターやらしてもらえなくなるんだっけか」
「わかってたら集中してやれ!!」
「…そういや、相手の1年てどんな相手かな?先輩よりはマシだよな?」
「どんなヤツだろうと関係ねえよ。勝つ以外の選択肢なんか無い」
「俺も今そう言おうとしてたんだ!」
「…チッ」
「しっ、舌打ちすんなっ!」
セッターのやれないバレーなんて俺にとっての地獄だ。
「来いやー!!」
ドッ
やべ、つい力入りすぎた。
ボールは大きく放物線を描き遠くへ飛んでいってしまった。
「おーい!お前しっかりしろよなー!
……って、」
日向がボールを追いかける先にいたのは、
『……』
美里だった。