第23章 止まり木
谷地 side
「………」
すごい。
何がすごいって目の前の全てがすごい。
まるで日向のように高く飛び上がる美里ちゃんも、ペットボトルを的にしていた時とは違う完成度の高いトスを上げる影山くんも、2人のコンビネーションもとにかくすごかった。
誰が声を掛けたのか、その様子を一目見ようと別の体育館で自主練をしていた人たちも集まってきた。周りの人たちは2人が何の練習をしているのかということよりも、美里ちゃんが影山くんのトスを平然と打っていることに驚いているようだった。
その中に日向も混ざっていたようで、何かを叫びながらこちらに走ってきた。
「か、影山ぁあ!?スパイカーが必要なら俺に声掛けろよ!」
「まだ感覚掴んでる最中なんだよ、待ってろ」
「なんでだよ!もう鈴木さん打ててるじゃん!」
「バカ、鈴木さんだから打ててんだよ。こいつ以外が打てるようなトスはまだ完成してねえ」
「は?どういう意味だよ」
「だから…」
『日向くん、私影山くんのトスに慣れてるから…トスが少しズレてもなんとなく合わせられるんだよね』
「えっ!?…じゃあ、そのやり方教えてくれよ!」
『うーん…それが自分でもどうやってるのかが分からなくて』
「そんなぁ〜っ!」
「日向、多分美里ちゃんと影山くんは昔から一緒に練習してるから、お互いの呼吸とかタイミングが読み取れるんだと思う。それは理屈じゃないし、日向が今からやろうとしても難しいんじゃないかな…」
「……ぐぬぬ、色々羨ましい」
肩を落としながら音駒や梟谷の人たちの元に戻っていく日向。そこからまたしばらく、このトス練は続いた。
「影山、実際にスパイカーを意識してみてどうだ?」
「ハイ、なんとなく見えてきました」
「そうか、鈴木もお疲れさん」
『…はぁ、はあ…お疲れ様です』
「よし、今日はもう上がれ」
私たちは片付けをして、体育館を出た。