第23章 止まり木
5日目の夜、飛雄のトスも最終形態が見えつつあった。
「………」
『………』
確かに私たちは、あの日澤村先輩に言われた通り言葉を交わすことなく自主練が成立していた。
体育館内にはボールの弾む音と、もうひとつのコートで自主練をする先輩たちや音駒メンバーの声…それと、的であるペットボトルを数センチ外して悔しがる飛雄の吐息が聞こえていた。
「クソッ…!」
呼吸を荒らげながら膝に手をつく飛雄に、コートの外で様子を見ていた仁花ちゃんが眉を下げていた。
「影山、ペットボトルを単なる目標だと思うな。イメージしろ、できるだけ具体的にスパイカーを」
「…スパイカーを、イメージ」
すると、飛雄は仁花ちゃんに声を掛けた。
「谷地さんスンマセン、ボール出しお願いします」
「…うぇっ!?しゃ、しゃす!」
続いて向けられた飛雄の視線に、何を求められているのかが分かった。
「飛べ、“日向” 」
『…………』
私はこくりと頷いて、屈伸をした。