第23章 止まり木
月島 side
この次の日の朝、僕は “茨の道” を選んだのだと改めて痛感することになる。
朝食を食べるために食堂へやってくると、そこには既に食器を戻すために立ち上がる影山の姿があった。空になった食器には、きっと今日も山盛りの食材が盛り付けられていたのだろう。想像するだけで空腹のはずの胃が重くなった。
「おはよう、月島」
「はよ」
声を掛けられて目を向けると、すぐ側で昨日の3人が朝食を食べていた。
「おはようございます」
「今日の朝食当番、烏野だぞ〜」
「そうですか」
…鈴木がいるって言いたいのか。
山口ならまだしも、他の人に知られてるとなるとちょっと厄介だな…そんなことを考えていると、食器を戻した影山が「ご馳走様でした」と軽く会釈をしながらカウンターの前を通りがかった。
『あ、影山くん』
すると、カウンターの中から声を掛けた鈴木が、何故かズイッと身を乗り出して手招きをした。
「?」
はてなマークを浮かべた影山が鈴木に近付くと、鈴木は影山の口元に手を伸ばした。そして、何かを摘んでそのままパクリと自分の口に運んだ。
『お米ついてた』
「おう」
顔色ひとつ変えることなく僕たちの横を通り過ぎた影山は、何事も無かったかのように食堂を出ていった。
「……………」
なんだ今の?
目の前で起こった情報の処理がし切れず、僕は頭が真っ白になった。
「……は?ちょ、今の見た」
「見ました」
「見間違いじゃ…ねーよな?」
「見間違いじゃないですね」
黒尾さんと赤葦さんがそろりと僕を見る。
「こっちを見られても」
「スマン…つい」
その時、カウンターから明るい声が聞こえた。
『あっ、ツッキーおはよ!』
「………」
こっちもまるで何事も無かったかのような雰囲気だ。
『ごはん、普通で平気?』
「……あ、うん」
『ツッキー?どうしたの、元気ない?』
「ちょっとね」
キミのせいだよ、とは言えずに僕はトレーを受け取った。
『今日も頑張ろうね!』
ニッコリ微笑んだその顔は、僕の好きな表情だった。
「っ…なんなんだよ、もう」
『えっ?』
「なんでもない…ッ」