第23章 止まり木
月島 side
「………」
鈴木に対して王様は幼なじみ以上の感情を抱いている、それが今ので明らかになったってことか?
…それでもまだ信じ難い。だって王様がドギマギしたり、取り乱しているところなんて見たことがなかったから。思わず赤面してしまうような鈴木の発言や表情にも、いつも影山だけは無反応だ。
アイツ…バレーのことに関しては猪突猛進な単細胞のくせに、鈴木のことになると、表面上仮面を被って取り繕っているのか?もしくは知らないフリ、他人のフリに慣れすぎたとか。
すると黒尾さんが僕をチラリと見た。
「で?どうすんの、ツッキーは」
「…何がですか?」
「バレーでチビちゃんに敵わないと思ってるツッキーは、恋愛では影山に白旗を振るのかな?」
「……っ、」
ホンット腹立つ、人のことを面白がって。
めんどくさい。こういう絡みも、こういうのをサラリと躱せない自分の気持ちも、全部…全部めんどくさい。
──でも、
「……僕にだって、譲れないものはあります」
「フゥー、いいねえツッキー」
「…っていうか、黒尾さんもやたら鈴木にちょっかい出してましたよね?」
「んー?あわよくば俺のこと好きになんねえかなってだけで、俺は別に積極的に狙っちゃいねーよ」
「…えっ!?なにィ!?ツッキーは鈴木さんのことが好きだったってこと!?」
「そーだろ、どう見ても」
「木兎さん、さすがに遅いです」
「そっかぁ…ツッキーは鈴木さんが好きだったのか」
「…あの、怒りますよ?あとそのツッキーって呼ぶのやめてください」
「……好きな子からの特別な愛称だもんな?」
「違いますっ!黒尾さんいい加減にしてください!あの人が勝手に呼んでるだけで、山口だってそう呼んでるし…ってか、こういう風に茶化されるんならもう僕この自主練に参加したくないんですけど」
「だあぁあ!悪かったよツッキー!なあおい木兎、自主練だ!自主練やるぞ!」
「おうよ、んじゃさっさと始めようぜー!」
「……はぁ」
僕がため息をつくと、赤葦さんに背中をポンと叩かれた。
「月島、茨の道を選んだね」
「…そうかもしれない、ですね」