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【HQ】初恋に溺れて息ができない【影山飛雄】

第23章 止まり木


『ねえ影山くん、今の』

「…お前、もう赤葦さんのこと見んな」


飛雄は私にしか聞こえないくらいの声でそう言った。その表情はあまり見覚えのないものだ。おかしいな…いくら目を見ても飛雄の考えていることが分からない。

赤葦さんを見るなって…どうして?



私たちを遠くから見ていた日向くんと仁花ちゃんが駆け寄ってきた。


「ナーイス影山くん!」

「…は?」

「今、鈴木さんのこと守ったんだろ!」

「ドラマみたいだった!」


飛雄は腕を掴んだままだったことに気が付いたのか、焦ったように手を放した。


「ち、ちげえよ」

「全く照れちゃって影山くんは」

「ちげえって言ってんだろ!」


『そうだよ日向くん、影山くんは早く自主練がしたかっただけでそういうのじゃないから』


「え……鈴木さん、マジ?」

『なに?』


「……あ、いや…影山お前」

「うっせえ黙れ」



すると、飛雄は長く息を吐いた。そして、両手で頬を叩くと日向くんに声を掛けた。




「日向、今日の夜から俺はお前と練習しない。もちろん試合でも新しい速攻は使わない」


「!?」



「エ゙ッ!?…美里ちゃん!?」

『大丈夫、多分そういう意味じゃないよ』


「なんでだよ!?」


「お前が言ったんだろ、やめんなって」


「あっ…」


「俺がトスをミスってるうちはお前の練習になんねえだろ」



「「!?」」



『ね?』

「……あ、うん!」


「お前が気ィ遣うなんてコエェ〜!でも早く落ちるトスくれよ!打ちたい!」


無邪気にそう言う日向くんを、飛雄はブンッと投げた。



「だから練習するっつってんだボゲェエッ!!…つか、烏養さんが話してたじじいって誰だ?」

「烏養元監督」

「!?てめぇ、一人だけ烏養監督に教わったのか!!」

「コーチに連れてかれたんだ!抜け駆けしたみたいに言うな!」




「早く新しい速攻が見たいなぁ…」



ボソッと仁花ちゃんが言うと、2人はバッと振り返った。




「当然だ」
「やってやる」



「影山カブんじゃねえ!」

「おめーだよ!」




「変人コンビ再起動だ…!」

『ふふ、だね!』





「おい鈴木さん、やんぞ」

『おう!』



私たちは自主練を始めた。

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