第23章 止まり木
またどこかへ歩き出したツッキーの背中を見ていると、山口くんと目が合った。
「え、うそ…鈴木っ!?」
『ごめん、ツッキーと話そうと思ったんだけど話しかけられなくて…盗み聞きするつもりなんてなかったの』
「いや大丈夫、びっくりしただけ」
『…山口くんカッコよかった』
「うぇっ!?」
『鳥肌が立ったよ、カッコよすぎて』
「ちょっ、鈴木もうやめて…俺そういうの慣れてない!」
『カッコよかったのに…』
「鈴木〜っ!」
真っ赤な顔でほっぺに手をやる山口くんに、ふふっと笑う。
「笑わないでよ…」
『違うよ』
「え?」
『嬉しかったの、ツッキーの止まり木がちゃんとあって』
「ツッキーの止まり木?」
『自分の弱い部分って、きっと誰にでも見せられるものじゃないでしょ?それを見せられる人が、ツッキーにもいたんだなって』
「それが……俺?」
『うん』
「…どうかな、そうだといいんだけど」
恥ずかしそうに俯く山口くんの腕にポンッと触れる。
『お互い、分かりにくい幼なじみを持って大変だね!』
「悪かったな、分かりにくくて」
『!?』
突然背後から聞こえた声に、肩がビクリと跳ねる。
『とびっ…やまくん!?』
「だから誰なんだよそれは」
「っ…か!?影山、おっ…おお俺たち違うよ!?ただ普通に話してただけで」
「?」
『山口くん、どうしたの?』
「あっ…はは、睨まれたのかと」
「?睨んでねえ」
『眉間にシワ寄せてるから』
「寄せてねえ」
「そういえば影山、どうしたの?何か用事?」
「あー………まぁ、便所」
「トイレ?…トイレなら反対ほう……」
そう言いかけて山口くんは固まった。そして飛雄の顔をバッと見た。
「影山大丈夫!何もなかった!さっきまでツッキーと俺が話しててその間鈴木は1人だったし本当に大丈夫、無事だよ!」
「……おう」
『え、なに山口くん?』
すると山口くんは、私を見て苦笑いした。
「鈴木は影山が幼なじみで大変って言ったけど、影山だって鈴木が幼なじみで大変だよね」
「…聞いたかよ?」
『ちょ、どういう意味!?』
山口くんの吹っ切れたような笑い声が響いた。