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【HQ】初恋に溺れて息ができない【影山飛雄】

第23章 止まり木


「ハァ…ツッキーは、昔から…何でもスマートにカッコよくこなして、俺いつも羨ましかったよ」


「だから?」




「最近のツッキーはカッコ悪いよ!」



「『!』」




「日向はいつか “小さな巨人” になるかもしれない。だったらツッキーが日向に勝てばいいじゃないか!日向より凄い選手だって実力で証明すればいいじゃないか!!身長も頭脳もセンスも持ってるクセに、どうして “こっからは先は無理” って線引いちゃうんだよ!?」



こっそり覗いてみると、山口くんはツッキーと向かい合い真剣な眼差しで見つめていた。こんな山口くんを見るのは初めてだった。



「…例えば、凄く頑張って烏野で一番の選手になったとしてその後は?万が一にも全国に行くことができたとしてその先は?果てしなく上には上がいる、例えそこそこの結果を残しても…絶対に “1番” になんかなれない、どこかで負ける!それをわかってるのに、みんなどんな原動力で動いてんだよ!?」



その言葉を聞いた瞬間、初めてツッキーの心の内を覗いたような気がした。


私はずっと、負けず嫌いで熱い心を持ったツッキーがバレーに対して一生懸命にならなくていい理由を探していることが不思議だった。

…そうか、そういうことだったんだ。あれはそんなものを探しているんじゃなくて、“いつか” 負けた時に自分の心を守る為の予防線を張ろうとしていたんだ。




「そんなもんッ」


唸るように声を荒らげた山口くんは、ツッキーの胸ぐらを掴み上げた。






「プライド以外に何が要るんだ!!」






『…………っ』








「…まさか、こんな日がくるとは」






ツッキーはキュッと下唇を噛み締めて笑った。





「…お前、いつの間にそんなカッコイイヤツになったの」

「エ゙ッ」


「お前、カッコイイよ」

「え……えと?」




「でも納得はできない……ちょっと聞いてくる」


「!?…ツッキー!?」




どこかへ歩き出したツッキー。
物陰からそれを見ていると、くるりと身を翻して私の目の前にやってきた。まさか、バレてた!?



「キミ盗み聞きなんていい趣味してるよね」

『…ご、ごめん』


「別に…“見てる人はいる”って宣言されたばかりだし?全く侮れないよね、キミも……山口も」


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