第23章 止まり木
今日何戦目かの、生川との試合中。
簡単なスコアをつけながら情報をまとめていると、隣に立ったコーチが武田先生に話しかけた。
「…先生は月島どう思う?」
ツッキー?
「?…マジメにやってる、と思いますけど」
「 “合格点をとっていても100点を目指さない” …って感じなんだよな、月島は」
コーチの言いたいことはなんとなく伝わってきた。合宿を経て、みんなの向上心が右肩上がりに上昇している今、覇気のないツッキーはある意味目立ってしまっているのだろう。
「別に熱血を求めているワケじゃねーけど、このまま実力で抜かれていくならレギュラー替えることになる。コートに立つのは試合で勝てるメンバーだからな…貴重なチーム1の長身だ、月島がブロックの要になってくれれば守備のレベルがグッと上がるんだけど…」
「…なるほど」
『コーチには、ツッキーがクールに映りますか?』
「ん?…まぁ、そうだな」
『そうですか』
「…なんだ、鈴木」
『あ、いえ…私、コーチの心配するようにはならないような気がしていて』
「ん?」
『ツッキーは大丈夫だと思いますよ』
根拠はないんですけどね!と私が笑うと、コーチはフッと口角を上げた。
「そう信じたいな」
でも、ほんの少しだけいつもと違う雰囲気のツッキーが気になってペナルティのあとに声を掛けた。