第23章 止まり木
黒尾 side
『シトルリンっていうアミノ酸は、筋肉の疲労を軽減して回復を助けてくれますし、あとは……』
「なになに!?鈴木さんすげえじゃん」
「鈴木さんはスイカ博士なのかな?」
「いや、鈴木はスイカに限らず食材全般の栄養素にめちゃくちゃ詳しいんだよ」
「へぇ…頭も良いのか」
「あいつ、期末学年1位」
「「まじでっ!?」」
「料理もすげえ美味いしな」
「「うんうん!」」
「いいなー、手料理食ってみてえ!」
「さすがは超ハイスペックマネージャーだな…ところで、烏野のみなさんはどうして鈴木さんの料理の腕を知ってんの?」
「あぁ、合宿の時に飯作ってくれたんだよ」
「俺らのとこの食堂のおばちゃんは合宿所には来てくれなくてさ」
「なるほどね」
顔が良くて、性格が良くて、頭も良くて、料理も出来て?それからテーピングに試合分析に練習の補佐…って、改めて最強すぎない?
人差し指を立てながらスイカの栄養素を語っていた鈴木さんが、ふいに俺を見て楽しそうにこう言った。
『あ、黒尾さん!スイカのリコピンは心臓や血液の健康をサポートしてくれて、ヘモグロビンを効率的に働かせてくれるんですよ!音駒の血液担当のみなさんには特にピッタリだと思いませんか?』
「ふはっ、俺たち血液担当だって!スイカ食っとこ」
「研磨以外かな?」
「つか鈴木さん、覚えてたんだ」
『覚えてますよ、あれ格好良かったですもん!』
「んじゃ今度特別に鈴木さんも混ぜてあげよう、リエーフのレシーブ練習に付き合ってくれたお礼な」
『わーい!』
「あれ凄かったよな、鈴木さんのサーブは俺もすごい練習になった!」
「うん、すげえ」
愛嬌があって人見知りもしない鈴木さんは、どこの輪でもみんなを笑顔にしていた。
そんな中、鋭い視線を感じて目を向けると、
「………」
その視線の主はセッターくん、ではなく…ミドルブロッカーのメガネくんだった。
「…黒尾?どうかしたか」
「あー…あのさ、実は昨日お宅のメガネくんの機嫌損ねちゃったかもしんなくて」
「え?」
俺の異変に気付いた澤村に、俺はこっそり昨日の夜の自主練での出来事を話した。