第23章 止まり木
『え?』
「鈴木は影山の考えてることがわかる?」
『そうですね、まあなんとなくですが』
「お前らのそういうのってどういう感じなの?」
『そういうの…?』
「ほら、お前らって言葉がなくても会話が出来てる感じだろ?ボール出しの時も声出さないし、目が合っただけで何言ってるのかがわかるみたいな」
『えっ、ボール出しの時そうでした!?』
「ははっ、マジか!………なんかさ」
澤村先輩は、体育館の中の飛雄を見た。
「影山の考えてることって、正直俺たちにはあんまりわかんないんだよね。目を見ても頭の中は読み取れないし、表情だってそんなに多くを語るタイプじゃないと思うし」
『そうかもしれないですね』
「でもさ、わかってやりたいとは思うんだよ…あいつのこと」
『澤村先輩…』
「あいつが最近行き詰まって悩んでたんだろうなっていうのは、影山を見る鈴木を見て気が付いた。お前はわかりやすいからな」
『えっ!』
「本当は俺たちだって影山が苦しい時に手を貸してやりたいし、力になってやりたい…影山は俺たちにいつも、たくさんのチャンスと力をくれるから」
どうしよう…泣きそう。
「鈴木、影山を支えてくれてありがとう。それと、もう安心していいよ」
私が見上げると、澤村先輩はニッと口角を上げた。
「俺たちはコートの中で影山を独りにはしない」
『!』
「俺たちは、あいつと分かり合うことを絶対に諦めないから」
『………っ、』
澤村先輩の言葉に涙を堪える一方で、何故か笑いが込み上げてきた。
『ふふっ…あはは』
「どうした?」
『影山くんが烏野高校を選んでくれて、本当に良かったなと思って』
「え?」
『…じゃないと私も先輩たちに会えなかった』
ぽつりと呟いて、私は頭を下げて体育館の中に戻った。
良かった、本当に良かった。
飛雄が烏野を選んでくれて。
飛雄が、この人たちと出会えて…
本当に良かった。