第4章 “頂の景色”
その後クラスでは、入学に際し必要な書類がたくさん配られた。その中の1枚を手にする。
…入部届、か。
烏野高校には家庭科部がなく、その他の部活も検討したがどうも決定打に欠けていた。まあ強いて言うなら英語部かなとも思ったけれど、部活として取り組みたいかと言われると微妙だ。
『どうしようかな〜』
「…まだ決めてないの?」
『うん』
「なんで?中学の続けたら?」
『それがないんだよ…やりがいがないとつまらないじゃない?』
「別にたかが部活にやりがいなんて感じる必要もないでしょ」
『ツッキーは決まってるの?』
「…ねえちょっと、その呼び方定着しないでよ」
『なんで?かわいいのに』
「188の男がかわいいわけないだろ」
『じゃあ名前はなんていうの?』
「……はあ、これ」
ツッキーはそう言って嫌そうに名前の書かれた書類を見せた。
『つきしま、けい?』
「…え?」
『あっごめん、ほたるか』
「っ……最悪」
そのままツッキーは机に伏せた。
『ごめんって…悩んだんだけど』
「……けい」
『え?』
「だから、けいで合ってる!」
伏せたまま半分だけこちらを向いた。
『なんだ、合ってるんじゃん』
「うるさい」
『けい、って呼ぼうか?』
「は?!バッカじゃないの?普通に苗字にして」
『じゃあツッキーでいいじゃん』
「…もう僕疲れた、勝手にしろよ」
ツッキーOK!というと少し離れたところにいる山口くんと目が合った。手を振ると嬉しそうに大きく振り返してくれた。
あれ?そういえば結局どの部活に入るのか聞けなかったな。