第23章 止まり木
「おはようございます、到着ですよ〜!」
武田先生の声で私たちは目を覚ました。昼寝をしてしまったのでなかなか寝付けないかと思っていたら、車内の心地よい揺れにすっかりよく眠ってしまった。
バスから降りて身体を伸ばしていると、ツッキーに笑われた。
『なにさ?』
「いや、キミよく寝てたなぁと思って」
『え!なんで知ってるの!?』
「最後のトイレ休憩、起きなかったでしょ?」
『私の行ってないトイレ休憩が…気付かなかった!』
「起こしてあげようかと思ったんだけど、あまりに気持ちよさそうに寝てたからさ」
『…はっずかしい!』
「あははっ」
「美里ちゃん、ホントによく寝てた」
『潔子先輩まで!?』
「かわいかったよ」
『……反則だあっ!』
朝日をバックにニコッと微笑んだ潔子先輩がとても綺麗で、私は仰け反った。
「なーにが反則だって?」
振り返ると、そこには黒尾さんたち音駒のメンバーがいた。
『あ!みなさん、おはようございます』
「やあおはよう、朝から元気ね」
「長旅ご苦労さん」
「なあなあ!スカイツリーどこ!?」
「えっ、スカイツリー…?」
「あっ!あれってもしかして東京タワー!?」
「エ゙っ…」
孤爪さんを困らせる日向くん、黒尾さんたちはそれをニヤニヤ見ていた。飛雄は欠伸をしながら日向くんの指さした鉄塔を眺めていた。
『…東京タワーじゃないからね?』
「!?……知ってる」
『ふーん』
「ホントだからな!」
各学校に挨拶を終えた私たちは、着替えを済ませてアップに入った。私はもちろん試合には参加しないけれど、アップにはいつも通り参加した。
「よーっしゃ、死ぬ気で拾うぞ鈴木!」
『はい!』
みんなのスパイクを西谷先輩と並んで拾う。旭先輩のスパイクを西谷先輩が綺麗に上げた。
「旭さん、まだ寝てんスか!?」
「起きてるよ、ちくしょー!」
今度は私が田中先輩のスパイクをレシーブした。
「だぁあっ!おはようございます!!」
『っはは、今起きた!』
田中先輩の突然の起床宣言に私たちは笑った。