第23章 止まり木
「ただいまー」
お母さんの声で目が覚める。
「…んぁ?」
『んー…』
昼食の片付けをした後、私たちはソファでテレビを観ながらいつの間にか眠ってしまっていたようだ。
「乾燥機の中のもの乾いてるけど、今日持ってくの?」
「…うん、持ってく」
「なに、あんたたち寝てたの?」
「…ん、ふぁあ…」
「飛雄よだれ!カバンどこ?部屋?」
『へや…』
「入れとくからね」
『ありがとー…ふわぁあ』
欠伸をして伸びをすると、部屋は薄暗くキッチンには夕日が差し込んでいた。
──午後11時30分。
「じゃあ、いってきます」
『いってきます』
私たちは荷物を背負って玄関で靴を履いていた。
「本当に送っていかなくていいのか?」
「そうよ、荷物も重いのに」
「大丈夫だよ」
「美里もいるし…」
「やっぱり出すか、車」
『大丈夫大丈夫、飛雄がいるから』
「そうか?何かあったらすぐ連絡するんだぞ?」
「飛雄、ちゃんと美里見とけよ」
「わかった」
『おい、あたしゃ犬か』
両親たちに手を振って私たちは学校へ歩き始めた。いつもと同じ道なのに、なんだか知らない場所みたい。少し落ち着かなくて、キョロキョロとあちこちを見回していた。
「おい、勝手にどっか行くなよ」
『行かないよ!』
「ソワソワして、散歩中の犬か」
『チワワかな』
「チクワ?」
学校へ着くと、もう何人か集まっていた。夜中ということにテンションが上がる日向くんに、飛雄はチラッと私を見た。
『……うるさいよ』
「まだ何も言ってねえだろ」
そして集合時間の0時、バスは予定通り出発した。