第23章 止まり木
夏休みに入り、いよいよ今日は東京へ出発の日。
今日の部活は午前練のみで、深夜0時に再集合となった。私たちは家に帰ってから荷造りを始めた。
「これ、お母さんが使っていいって」
『ありがとう!』
下着や靴下などをまとめられるように巾着のようなものをいくつか持ってきた飛雄。その中から私はオレンジ色のと青地にネコの描かれたものをもらった。
『私2つで間に合ったけど、これ飛雄使う?』
「ん…って、なんでお前キーテイちゃんの使わねえんだよ」
飛雄はピンク色の巾着を持って私を睨んだ。
『だって飛雄好きだったじゃん』
「いつの話してんだよ」
『えー?私もう入れちゃったし、大丈夫だよ!誰も見ないって』
「ったく…」
長い合宿、ごちゃつくカバンの中を整理するのに背に腹はかえられなかったらしい。飛雄は眉間に皺を寄せながらキーティちゃんに何かをしまった。
あとは、私も飛雄も今乾燥機に入ってるジャージやビブスを下の方に入れれば荷造りが完成だ。私たちは巾着を一番上にする為に、カバンの近くにそれを置いた。
『はあー、それにしても1週間か…今回は長いね!』
「ああ」
『涼しいって言ってたけど、ちょっと心配』
「埼玉、すげえ暑いってニュースでやってたよな?」
『あぁ熊谷ってところでしょ?昨日やってたね!暑すぎて駅の上のところから水が出るの、見てみたいなあ…』
「バテんなよ、美里」
『自分の心配しなよ』
「俺はバテねえ、鍛えてるからな」
『それは見物だわ、今回はペナルティ地獄にならないことを祈る』
「…ペナルティといえば、少しはフライング上達したのかよ?」
『西谷先輩に教えてもらってちょっとは出来るようになったけど、最初に打ったのが痛すぎてトラウマで』
「あれすげえビビったんだよ、お前が急に倒れたのかと思って…ッフハ、なのにあれフライングって…ヘッタクソすぎてな…」
堪えるようにクックと笑い出す飛雄。
『うるっさいなあー!…ああそう、あんたお昼ご飯いらないのね』
「いるに決まってんだろ、腹減った」
『へえ』
「…悪かったよ」
『ふふ、早く下いこ』
私は飛雄の肉が食べたいというリクエストを受けて、漬け込みいらずのレシピで唐揚げを作った。余った唐揚げは夜食用に、おにぎりにすることにした。