第23章 止まり木
菅原 side
「あの…鈴木さんいますか!」
そんな声が響いて、俺たちは一斉に顔を向けた。そこにいたのは、サッカーの練習着を身に纏った見覚えのない男子生徒だった。見覚えがないということは多分1、2年生。意を決したような表情に俺たちはコイツの目的を一瞬で悟る。
「おいあれって」
「ああ、間違いないだろうな」
「マジか、勇気あんな…」
『…あ、はい』
「鈴木さん、ちょっと話したいことがあるんだけど」
『話?なんですか?』
にこやかだけど、少しだけ壁を感じるいつもと違う様子の鈴木。多分鈴木もコイツの言う “話したいこと” の意味が何か分かってるんだ。
「ここじゃちょっと…って影山!?」
「………」
ソイツは影山を見て驚いたような声を上げた。
「おまっ…いたのかよ!」
「…そりゃいるだろ、バレー部なんだから」
モグモグと鈴木の作った弁当を頬張りながら、いつもと変わらない様子で影山はそう言った。
「あ、そっか…えっと鈴木さん、来てもらってもいいかな?」
『あー…はい、お弁当が途中なので少しなら』
「うん、少しでいい!」
ペットボトルに口を付けて中指で唇を拭った鈴木は、俺たちに『すみません』と一言告げて立ち上がった。鈴木がソイツの近くに歩み寄ると、2人はどこかへ行ってしまった。