第22章 初めての東京遠征
元来た道を辿るように、私たちは学校へと歩いていた。放課後で人も疎らな通り道。赤く染まり始めた空をぼんやり眺めていると、突然飛雄に腕を掴まれた。
『ん?』
飛雄を見上げると、その視線は遠くからこちらに走ってくる車に向けられていた。
「………」
車道側を歩いていた私の腕を引いて歩道側に移動させてくれた飛雄。その慣れた動作はこの上なくスマートだ。いつもそう、この幼なじみはこんな風に私を守ろうとしてくれるのだ。
そんな飛雄に思わず笑みがこぼれる。
「…何笑ってんだよ」
『いや、優しいなぁって』
「別に普通だろ」
言葉はぶっきらぼうだし、表情も豊かではない。でもこの不器用だけれど真っ直ぐな優しさがじんわりと胸に響いた。
『…いつもありがとね』
「んだよ」
『前に話した飛雄に感謝する日、今日にしちゃおうかな…って』
ブーッブーッ
『あれ、電話鳴ってない?』
「あ?」
飛雄がスマホを取り出すと、その着信は切れてしまったようだ。するとすぐに今度は私のスマホが震え始めた。画面を見ると登録のない番号だった。
『誰だろ………はい、もしも』
〈鈴木か!?影山は近くにいるか!?〉
『烏養コーチ?…はい、影山くんなら今隣に』
〈スマン、番号は澤村に聞いた!今どこにいる?〉
『今学校に向かう途中で…』
「なんだとっ!?」
『あ…今ちょうど坂ノ下商店の前を』
「〈あ゙っ!!〉」
電話と同じ声が近くで聞こえて、私たちは声の方向に目を向ける。そこには物凄い勢いでこちらに走ってくる烏養コーチがいた。
「影山ァァァアア!!」
「うお!?」
「通り過ぎるな!!置いて来い!!」
「ハイ!?」
「止まるトスだ!!!」
飛雄の肩をグイッと掴んだ烏養コーチは、頬に汗を流しながらそう叫んだ。
「………?」
烏養コーチは、ポカンとする飛雄を見て「お前らついて来い!」と坂ノ下商店の中へ引きずり込んだ。