第22章 初めての東京遠征
どんな話をしてるんだろう?
階段の下から2人を見上げると、及川さんと目が合った。
「徹、話終わった?」
『うん』
「学校での話、俺とピッピだけの秘密な!」
『もちろん!2人の秘密!』
「お待たせ、猛」
「徹おっせーよ!」
「ごめん、何話してたの?」
「徹が彼女にフラれた話、ピッピにしてやった!」
「え!?嘘でしょ!ってかピッピ呼び!?」
「徹、美里ちゃんって子のせいでフラれたんだよな!」
『美里…ちゃん?』
「あ…バカ」
「そう!彼女といても美里ちゃんのことばっかり考えちゃうからかなーって徹が」
「だあー!猛もう黙りなさいね!行くよ!…またね」
「じゃーなピッピ!また遊ぼうぜ!」
『うん、猛くんまたね!お…及川さんもまた!』
及川さんたちを見送っていると、階段の上から飛雄も下りてきた。
『あっ影山くん、話聞いてもらえた?』
「…ああ」
『よかったよかった!』
「なあお前、ああいうのもうやめろよ」
『ああいうの?』
「俺のために、自分犠牲にすんの」
『ははっ!影山くん、犠牲だなんて大袈裟だなあ』
「笑い事じゃねえ、二度とすんな」
『!』
飛雄の怒気のこもった声にビクッと体が震える。私は急いで頷いた。
『…わかった、余計なことしてごめんね?』
すると、飛雄は私を置いて歩き出してしまった。
『え、ちょっと?…どこ行くの?』
「学校」
『…学校?』
いつもよりほんの少し歩幅の広い飛雄。私に合わせようとはしてくれているけど、やっぱり怒っているんだ。
飛雄はどうして怒ってるんだろう、私が勝手なことをしたのがいけなかったのかな…。でも私は、どうしても及川さんに飛雄の話を聞いてあげて欲しかった。飛雄が目標にする及川さんなら、飛雄の悩みを解決してあげられるんじゃないかと思ったから。
少し先を歩く飛雄が突然くるりと振り返った。
「………」
『なっ、なに?』
「誰でも良いわけじゃねえっつったくせに」
『え?』
「…ならもっと大事にしろよ」
『なにを?』
「するんだろうが…いつか好きなヤツと」
『えっ!?』
盛大な舌打ちをしてスタスタと歩き出した飛雄を私は必死に追いかけた。