第4章 “頂の景色”
影山 side
割れんばかりの拍手の中、美里は壇上で頭を下げた。
なんだ今の挨拶。
……すげーな、やっぱ。
まるで心の中に直接流れ込んでくるような言葉たちは、優しくも時折強さを孕んでいてあいつらしかった。
話を聞きながら全意識が持ってかれる、そんな感覚。周りの反応を見るに、それは俺が知り合いだからってだけでは無さそうだった。入学式で話聞きながら涙を流してるヤツなんて正直見たことねえし、なかなか拍手が鳴り止まないなんてこともこれまでにない。
あいつは俺のことを天才だと言うけれど、俺はあいつこそが天才だと思っている。あいつは昔から、何でも出来た。俺が努力してできるようになったことも1度見ただけで再現してみせたし、こうやって誰も期待してなかった入学式の挨拶で注目をかっさらうこともできる。
ただでさえ黙っていたって目立つ存在なのに、初日の入学式で既にこの学年中があいつを完全に認知したはずだ。
初めと同様、俺に目線を寄越した美里は清々しい表情で笑っていた。
最初くらい、息を潜めたっていいだろ。
少しくらい、俺だけが知ってるお前でいてくれたっていいだろ。
「…………」
やっぱりコイツは、
少しだって俺のものにはなりゃしねえんだな。