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【HQ】初恋に溺れて息ができない【影山飛雄】

第4章 “頂の景色”


『本日は、私たち新入生の為にこのような盛大な式を挙げて頂き誠にありがとうございます。暖かな春の日差しに包まれた今日この日、私たちは伝統ある宮城県立烏野高等学校への入学の日を迎えました』

この目に映る人たちが、共に高校3年間を過ごすメンバーなのかと思うと、なにか込み上げてくるものがある。みんな私と同じく、それぞれの受験を乗り越えて、今日ここに居るんだろうな。



『…私たち新入生一同は烏野高校の生徒としての誇りを持ち、家族や先生方、そして今日までこの烏野高校の伝統と歴史を築き守ってこられた先輩方に恥じることのないように、ひとつひとつの行動に責任を持って自立した高校生活を送ることを誓います』

今日の挨拶は私だけの自分勝手なものではなくて、みんなの想いをひとつに伝えることを目標にしていた。





『最後に、…烏とは非常に家族愛の強い動物なのだそうです』

唐突にカラスの話を始めた私に一瞬辺りがザワつく。

『他の鳥たちが早々に給餌をやめ無理やりに自立を促すのに対し、烏の親鳥は子が飛べるようになってからも甲斐甲斐しく餌を与えます。…後方にご着席の保護者の皆さま、ここまで私たちを立派に育ててくださり本当にどうもありがとうございました。お陰さまで私たちは、もうひとりでも飛ぶことができるようになりました。…ですがあと少し、もう少しだけ、どうか一番近いところで見守っていてください。これから私たちは、3年という月日を重ねながら、それぞれの翼をさらにおおきく広げ、夢に向かって飛び立ちます』

視界の中に、生徒保護者関係なくハンカチを手にした人が多くいた。私たちの両親もしきりにハンカチを顔にあてている。

みんなの気持ち…届いたかな。


お父さん、お母さん。
私の思いを大切にしてくれて
本当にどうもありがとう。



『本日は誠にありがとうございました。
新入生代表 1年4組 鈴木美里』



白鳥じゃなくて、烏を選んだこと、
後悔しないように、毎日を大切に歩んでいくね。

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