第22章 初めての東京遠征
影山 side
「ってえ…!」
突然頬に物凄い衝撃が走って、気が付けば床に投げ出されていた。
「何してやがんだ!バカヤロー!」
田中さんに殴られたのか…顔に手をあてながら起き上がろうとすると腹のあたりに重みを感じた。目を向けると、その正体は俺の背中に腕を回したままガタガタと震える美里だった。
「……おい」
『…………』
「おいって」
『…………』
「バカ、起きれねえだろうが…はなせ」
声を掛けても頭を押しやっても離れようとしない美里。
「……ハァ」
「よし、影山はもう一発殴るか」
「なんでスか」
「…美里ちゃん、もう大丈夫だよ」
谷地さんが声を掛けながら美里の肩に触れると、ようやく背中でシャツを掴む美里の手が緩んだ。
『っ…あ、ごめん…私びっくりして…』
その後、俺たちは谷地さんが救急箱から持ってきた絆創膏を傷に貼って家に帰った。美里の腕も、日向の爪が当たったのか所々血が出ている。帰り道は一切会話がなく、無言だった。
何も言わずに玄関で靴を脱ぐ俺たちに、お父さんは驚いた声を上げる。
「おいお前ら挨拶……っておわっ飛雄!?その顔どうした!?」
「…色々」
「美里も腕の絆創膏…、まさかお前ら外で喧嘩してきたのか!?」
『……してないよ、大丈夫』
美里はサッと靴を脱いで、先に部屋へと上がって行った。
ペラッ…
玄関の棚に置いてあった回覧板から、1枚のチラシが落ちた。
「…………」
それを横目に、俺も玄関を上がった。