第22章 初めての東京遠征
ミーティングを終えて森然高校vs生川高校の試合を観ていると、飛雄と日向くんが菅原先輩に連れられて体育館を出ていくのが見えた。私は気になってその後を追った。
「美里ちゃん?」
『あ…ちょっと外の空気当たってきます』
「わかった!」
開いた体育館のドアの向こう、3人が何かを話しているのが聞こえてきた。私はドアに背を預けてそれを聞いていた。
「…でも、試すくらいならいいべ?ホラ、前回音駒とやった時もぶっつけで普通の速攻できたわけだし…辛うじてだけど」
「あの時は普通の速攻ならできる可能性があったし、それしか突破口がないと思ったからです」
「………」
さっきの日向くんが目を瞑るのをやめるって言ってた件か…、ふと足元に誰かのシューズが見えて顔を上げるとコーチだった。目が合うとコーチは私の肩に手を当てた。
「…青城のラスト、気付いたら負けてた」
「!」
「気付いたら打ったボールはおれの後ろで、床に落ちてた…おれが負けたのに影山に謝られるなんて嫌だ」
「………」
「空中での最後の一瞬まで、自分で戦いたい」
「──青城戦で、スパイカーの100%の力を引き出すのがセッターだってちょっとわかった。…あの速攻はお前の武器だ、そんであの速攻にとって “ほんの少しのズレ” は致命的なズレになる。あの速攻にお前の意思は必要ない」
ジャリッと砂を踏んで飛雄が歩いてきた。飛雄は私に目線を落とすが、フイッと逸らして歩いていった。
「…お前、あっち頼むわ」
『はい』
コーチに背中を押されて、私は体育館に戻る飛雄の元に向かった。