第22章 初めての東京遠征
──音駒VS烏野
通算3セット目、
飛雄と日向くんは初参戦。
『昨日は2回負けてるんでしたっけ?』
「うん」
私は手元のスコアシートに名前を書き込みながら、コートに並ぶみんなを見た。
『…あれ、あの11番』
音駒の一際背の高いあの人は誰だろう。
潔子先輩も仁花ちゃんも情報がなく、烏養コーチから聞いてくるように言われた私は猫又監督の元へ走った。
「ん…おや鈴木さんじゃないか、どうした?ついに音駒に来る気になったかい?」
「やあ、鈴木さん」
『あはは…猫又監督、直井さんこんにちは!ちょっとお伺いしたいことがありまして…あの11番の方は?』
「ああ、彼は灰羽リエーフ。194cmの1年生でロシアとのハーフなんだ」
『194cm!?…すごい!前回はいらっしゃらなかったですよね?』
「高校からバレーを始めた初心者であの頃はまだレギュラーに入っていなかったんだ。だが身体能力が驚く程に高くてね、きっと面白いものを見せられると思うよ」
『そうですか!どうもありがとうございます』
するとコートの中から黒尾さんに手を振られた。私が会釈をすると、黒尾さんはベンチを指さした。
「鈴木さん、そこで見ていきなよ」
『えっと…』
「そうっスよ!ねぇ、キミ俺のこと聞きに来たんでしょ!?絶対活躍するから見てて!」
「おっ、おいリエーフ!鈴木さんはうちのマネージャーなんだかんな!俺たちだけを応援してんだかんな!?」
「知ってるけど、いいじゃん。いるだけでやる気出る」
「ぐぬぬぬ!せっかく鈴木さんベンチにいたのに!」
「ねえ、鈴木さん借りてもいいよね?セッターくん」
ネットを掴んで、何故か飛雄に声を掛ける黒尾さん。
「本人次第じゃないスか」
「アハハ!そのとーりだわ。…って冗談は置いといてさ、うちの芝山に試合のデータの取り方教えてやってくんない?あのスコアすげえ良かったから」
「あの、お願いします…」
隣で頭を下げる芝山くん。
『そ、そんな!頭上げてください!』
私は烏養コーチを振り返って見た。
OKのハンドサインに頷いて、私は猫又監督たちに頭を下げた。
『よろしくお願いいたします』
「大歓迎だよ」
私はベンチに座って、灰羽リエーフと空欄に名前を書いた。