第21章 影に隠した秘密
「……ろ、おい、鈴木さん」
『……』
「鈴木さん、起きろって」
『……んぅ』
「おい、美里」
『ん〜…とびお?』
名前を呼ばれて目を開けると、飛雄の顔が目の前にあった。濃紺の目が私をじっと見つめている。私の手が何かを掴んでいて、視線を落として見るとそれは飛雄の袖だった。
あれ…?ここどこだっけ?
たしか、遠征に向かう途中の車の中…
『……っわ!?ごめん影山くんっ!』
私は勢いよく離れた。
前を見ると真っ赤な顔をした日向くんと目が合った。
「…っ!」
「あっはっは!リアル少女漫画かよ、やばぁっ!」
『冴子姉さん…』
「おはよう美里、よく寝てたな!」
『揺れが心地よくて…すみません!』
「そりゃ光栄だわ、気にすんなって!良いモン見してもらったし、な!翔陽」
「はっ…はい」
「さーて、あと10分くらいで高校着くよ」
ガバッと制服を脱ぎ出す飛雄。
私が寄りかかってたから着替えられなかったのか。それにしても窓側に寄りかかって寝たはずなのに、いつからあんな状態だったんだろう…申し訳ないな。
「うぃー!着いた着いた!!」
「「おおっ!」」
『…わあ』
校門には “東京都立音駒高等学校” と書かれている。
『「東京だぁーっ!」』