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【HQ】初恋に溺れて息ができない【影山飛雄】

第21章 影に隠した秘密


カーブの少ない高速道路では、車内がシェイクされるような先程までの状態は大分落ち着いた。


「寝る」

『あ、うん』


飛雄は勉強の疲れが今頃出たのか、まるで電源が落ちたかのように眠り始めた。


「オラそんなに思い詰めんな!焦るのはわかるけどなー」


そう言いながら冴子姉さんは日向くんのほっぺを摘んだ。


「あががっ!」


「回り道には回り道にしか咲いてない花があんだからさ」


『おおっ!』

「よくわかんないけどかっけぇーっ!」

「あっはっは!アタシの隣でドライブできてんだから赤点に感謝しろってこと!…そういや翔陽は何でバレーはじめたの?」

「小学生の時テレビで春高見たんです!ちょうど烏野の試合で…それで──」


「小さな巨人を見たんです!」
「小さな巨人を見たとか?」


『!』

「冴子姉さん、小さな巨人知ってるんスか!?」

「おっ、やっぱ当たった?アタシ多分小さな巨人と同級生だもん」


「へァッ!?」


「つっても喋ったこともないけどさ、ヤンチャなヤツなら目立つだろうし知り合いだったと思うんだけどね」

「姉さんは “悪そうなヤツはだいたい友達” ってやつですか!?」


「わはは!それだな!…けどさぁ」


冴子姉さんの語る小さな巨人は、私たちの思っていた以上にエースの素質が光る人だった。話の途中でモゾモゾと隣で動き出した飛雄はエナメルバッグから今朝握ったおにぎりを取り出してモグモグ食べ始めた。


「姉さん、小さな巨人に詳しいんスね」

「!」

「べつにっ!たまたま!何回か試合見ただけだし!つーか起きたのかよ!」

「ハラが減ったんで」

「本能の赴くままか!」





『………』




窓の外の移りゆく景色を眺めていると、今度は私がウトウトしてきてしまった。段々と張り詰めていた緊張感が抜けてきて、程よい揺れも相まって瞼が重くなる。



「…お前、ねみいんだろ」

『ん…』

「寝れば?近くなったら起こしてやるよ」

『…ありがと』



私は隣の飛雄に安心して、目を瞑った。

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