第21章 影に隠した秘密
いよいよ東京出発の夜。
「おいおいおい!暗い顔すんな!追試一発でクリアして、先輩の用意した救世主を待ってろ!」
「うん、あそこまでやったんだから大丈夫だろ」
「ガツンとかましたれお前ら!」
「が、頑張って!」
「それじゃお前ら、東京で待ってるぞ」
「「……ウス」」
「鈴木も、こいつらよろしく頼むな」
『はい』
そう、2人だけを残すのは心配という声が挙がって私が一緒に残ることになったのだ。
「美里ちゃん、先に行ってるね」
『潔子先輩〜!待っててくださいね!』
「じゃあ美里ちゃん、また明日ね!」
『仁花ちゃん〜!また明日必ず会おうね〜!』
私たちは、手を振り出発していくみんなを見えなくなるまで見送った。
「影山」
「あ?」
「やるぞ、行ってやる東京!」
「当たり前だ」
家に帰ってお風呂から上がると、飛雄に勉強を教えて欲しいと頼まれた。
『……嫌だよ、集中できないって言われるの傷つくから』
「もう言わねえ!…ただ、」
『なに?』
「お前、グラさんなれ」
『は?』
「あと、場所はリビングな」
『はあ?』
私は飛雄に言われた通り、リビングで変装用のサングラスを掛けながら勉強を教えた。指定された位置も隣ではなく正面だった。しばらく現代文の解き方のコツを話しながら、勉強を見ていると突然飛雄が口を開いた。
「…なあ美里、全く関係ねえんだけど時間差攻撃って英語でなんて言うんだ?」
『Time lag attack』
「早っ」
『あんた、私が何を目指してるか忘れた?』
「?」
『影山飛雄選手の通訳』
「っ!」
『だから、まずは意地でも東京行こうね』
「……おう」
するとお風呂から上がったパパがリビングにやってきた。
「うわ、お前ら何やってんだよ!」
『パパ聞いて!飛雄が勉強教えてって言ってきたの』
「おぉそうか!…あー、でサングラス」
「……うるせえ」
「まだなーんも言ってねえだろ、口の悪いヤツめ」
「誰かさんに似たんだよ」
パパは飛雄の頭にポンと手を置いた。
「お前、明日帰ってくんじゃねえぞ」
「意地でも帰んねえよ」
「頑張ってこい」
「…ん」