第21章 影に隠した秘密
谷地 side
「「うう…」」
「僕はやらないよ、テストまでって約束だったし。まあせいぜい頑張れば?」
「ケチ島め…」
「ケチで結構、…あ、鈴木も一緒に帰る?」
『え?』
「ここにいてもやることないでしょ、家まで送っていってもいいけど」
月島くんは少しわざとらしく影山くんを見て言った。
『うーん…』
「帰んねえだろ」
即答した影山くんは手元の答案用紙を見つめていた。
「は?どうして王様が答えるのさ?…まさか家でも恐怖政治を敷いてたりして」
「あ゙?」
「それとも、僕が送るんじゃ不満?」
「別にそんなんじゃねえよ、ただ同じとこ帰んだからお前が送る必要もねえだろ」
「…ふーん」
「んだよ」
「別に。…じゃお疲れ様でした、バカ2人の面倒よろしくお願いしまーす」
ガラガラ…
「あー月島……はぁ、まったくあいつは」
「どしたスガ」
「ん、いやちょっとな…」
『……ねえ、』
「あ?帰りたかったのかよ、お前」
『ううん、そうじゃないけど』
「ならいいだろ」
『…うん』
ちょっと強引な言い方だけどそれがまた影山くんらしい。それに、小さく頷いた美里ちゃんもその強引さを当たり前のように受け入れていた。2人の空気感から、長年の信頼関係が伝わってくる。当たり前だけど、一朝一夕の上辺な関係じゃないんだ。
それにしても月島くんの真意が分からない、あの影山くんを試すような目線は何だったんだろう?
そこから私たちは、30分くらいみっちりと勉強をした。やっぱり私は美里ちゃんみたいに上手く教えられなくて、もどかしい気持ちになった。だけどなんとかして2人が遠征に参加してもらえるように残り数日、しっかり頑張ろうと心に誓った。