第21章 影に隠した秘密
谷地 side
「お前ら鈴木に勉強見てもらえよ」
「そうだよ、てかなんでそうしてこなかったんだよ」
先輩たちにそう言われた影山くんと美里ちゃんは、一瞬だけ目を合わせてすぐに逸らしてしまった。そういえばこの前の2人の喧嘩の原因って、勉強のことだったよね?確か影山くん、美里ちゃんが近くにいると集中できないって…。
『…私、勉強教えるの下手なんですよね』
「え?そんなことないって、すごく分かりやすいよ!」
「山口が言うなら間違いねえな!鈴木さん、影山はいいから俺に勉強教えて」
『えっ……あ、うんわかった』
誤解解けてないんだ…私が影山くんを見るとパッと目が合った。気まずそうに頭を掻く姿をみて思わず笑いそうになる。
椅子を移動させて日向の隣に座った美里ちゃんは『よろしくね』と笑った。日向の心臓がドキーンッて音を立てたのがわかった。
『じゃあ日向くん、英単語はまた覚えてもらうとして…最初に間違えたここから振り返ってみようか?』
「は、はい!」
『まずはここから、日向くんは “I has a cat” って答えを書いたんだね。日向くんが “has” を選んだ理由はあるのかな?』
「えっと… “has” が “持っている” って意味だって覚えてたから…かな」
美里ちゃんなんだかいつもと違う?話し方もゆっくりで声も優しくて…小学校の先生みたいだ。
『日向くんすごい!日向くんの言うように “has” は “持っている” って意味で間違いないの。ただ、“have” と “has” の使い方にはルールがあるから、そこを覚えてみようか』
「っ…」
首元まで顔を赤くした日向は美里ちゃんの説明を聞きながらさっきよりも小さくなっていた。その理由は、あの日影山くんの言っていたもので間違いなさそうだった。
先輩たちも顔を染めながら、なんとも言えない表情で2人を見つめているし、当の影山くんも「だから言っただろ」とでも言いたそうな目をしている。
間違えたことを否定しない包容力のある優しい話し方、伝えたいという気持ちから徐々に埋められていく距離、そして理解のレベルを測るために頻繁に向けられる上目遣いの視線…。
たっ、たしかにこれは思春期の男の子には刺激的やもしれぬ…!?