第21章 影に隠した秘密
『あっ!』
「へぇすごい、満点じゃん」
『………』
「キミさ、あんなに僕に負けないって言ってたくせに、いざ勝つとそんな顔するんだね」
『どんな顔?』
「申し訳なさそうな顔」
『そんな!…ことない』
「そう?僕にはキミが満点取って困ってるように見えるけどね」
そう言いながらツッキーはチラッと私を見た。
「入学式の日もそうだったじゃん、先生が全教科満点だって言った時に鈴木はすごく傷ついた顔してて」
『よく覚えてるね』
「まあね」
『あー…じゃあもうツッキーだから話す!私、嫌味な人だって嫌われたらどうしようって怖いの。テストで問題を解くのは好きだけど、学年最初のテスト返しは苦手で…点数を隠すことにずっと必死だった』
「へえ…馬鹿みたい」
『なっ、馬鹿!?』
「別にいいじゃん、そんなやつ放っておけば」
『…と言われても』
「どうせこんなの妬むヤツなんか大したヤツじゃないでしょ、そんなヤツこっちから願い下げで良いじゃん」
『…そうかな』
「そもそも鈴木自身が頑張った結果なのに、鈴木が褒めないで誰が褒めるわけ?認めてやんなよ、可哀想じゃん」
『えっ…ツッキーがそういうこと言ってくれるのすごく意外』
「は?珍しく元気なさそうだったからわざわざ柄にもないこと言ってあげたのにひどくない?」
『あーっうそうそごめん!ありがとう嬉しい!…でもあんまり自分のこと褒めるとか認めるとか苦手でさ、自信なくて』
「じゃあ僕が代わりに褒めてあげようか」
『え?』
「鈴木、よく頑張ったね」
そのツッキーの表情はこれまでにあまり見たことのない柔らかい笑顔だった。驚いてしまったけど、私は釣られて笑顔になった。
『えへへ、ありがとうツッキー』
「っ!」
『へぶ!』
ツッキーは突然私の顔に答案用紙をべシッと押し付けた。
『な…なっ!?』
「もう知らない、もう絶対に褒めてやらないから」
『なんで!?』
「てかっ、そもそも勝負してて僕1教科負けたわけだし、その相手を褒めてる場合じゃなかった!」
『ツッキー何点だったの?』
「91点」
『えっ!?すごいじゃん!』
「なに!?嫌味なの!?」
先程までの気持ちが嘘のように、今私は心から笑えていた。