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【HQ】初恋に溺れて息ができない【影山飛雄】

第21章 影に隠した秘密


月島 side

みんなが手を付けるのを確認してからプラスチックのフォークを手にした。綺麗にデコレーションされたショートケーキは、鈴木の言うようにたしかに上品な甘さで美味しかった。


「すみません、突然お邪魔して何から何まで」

「いや、あいつらが家に人連れてくるなんてもうずっとなかったから美里から連絡もらって俺たちも嬉しかったんだ。…ご覧の通りウチはちょっと変わった暮らし方してるもんで、あいつらも色々気にしてたみたいでさ」

「正直…今日2人のことを聞いた時はめちゃめちゃ驚きました。俺たちはこれまでずっと、2人はただの同級生だと思っていたので」

「そりゃそうだろうな」


「影山も鈴木もお互いのことをずっと知らないって言ってたし、学校では苗字で呼び合ってるしな」

「おれ、鈴木さんが影山のこと名前で呼んでんの聞いてびっくりしました…」

「俺は影山が美里って呼んでんの聞いて心臓出るかと思った!」


「ははっそうか!…母親たちからは聞いてたんだ、小学校の授業参観行ったら突然苗字で呼び合うようになってて驚いたって。理由は知らねえけど、まあなんかきっかけがあったんだろうな」


「………」


僕はキッチンに並ぶ2人を見た。

学校では決して見ることのない、仲睦まじい様子の2人。それは別に影山が笑ってるとかそういうことではなくて、2人の纏う空気感やお互いに気を許しているのが伝わってくる。


今日の夕方頃までは2人の関係なんて何も知らなかったし、何よりも僕は自分の気持ちにすら気付いていなかった。



──ああ僕は、鈴木が好きだったのか。


廊下で鈴木を守るように抱き締める影山を見て、その上に跨り手を握る鈴木をみて、どうしようもなく腹が立った。最初は嘘をつかれていたことに対する怒りだと思っていたのに、次第にそれはズキズキとした胸の痛みに変わっていった。

山口の煮え切らない表情を思い出して、こいつにはとっくにバレていたのだと気付いた。昔から山口は人の感情の変化に敏感で、僕に関しては殊更だ。それはきっと僕らの “幼なじみ” という関係性がそうさせているのだろう。



そう、僕は幼なじみという関係がどういうものかを知っている。


だからこそ苦しかった。

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