第21章 影に隠した秘密
トントン、と包丁で食材を切って大きな鍋に入れていく。
『………』
元々私たちのことを話すつもりなんてなかった。
隠して隠れて、ただひたすらに。
他人を演じる日々を過ごしていくはずだった。
でも、今心はポカポカとしている。
話せてよかったねと全身が言っている気分だ。
ブーッ
近くに置いたスマホが震えた。ママにみんなが来ていることを伝えた件の返事だろう。
〈もちろん大歓迎!私とパパは8時過ぎます〉
猫が踊るご機嫌なスタンプが添えられていて思わず吹き出してしまった。
少しすると階段からたくさんの足音が聞こえ始めた。姿を見せたみんなは、キッチンの方へと近づいてきた。
「ぐはっ…エプロン姿…!!」
『もう西谷先輩はそうやって…』
「だって仕方ねえだろ!」
「鈴木、俺たちも手伝うよ」
「切るのやろうか?包丁どこ?」
『包丁なんてそんな、指怪我したら大変じゃないですか!』
「え?」
『大丈夫です、お気持ちだけで!ありがとうございます』
「…って言ってるけど影山どうしよう」
「あー、指怪我したらバレーに影響出るからってヤツです」
「……なんと」
「今思い出しましたけど2人が廊下で転んでた時も、頭とか背中より先に指の心配してましたよね」
「それ俺も気になってた!その後のアレコレですっかり忘れてたけど…」
「さすが影山の幼なじみ、バレーに本気だぜ」
「なあ、テーブルどうする?」
私の隣にやってきた飛雄はキョロキョロと見回しながらそう言った。たしかにこの人数だ、いくらダイニングテーブルが10人掛けの大きなものだとはいえ、13人には少し足りない。
『そうだね…何人かソファ?』
「あ、お前んとこの椅子持ってくる。詰めりゃ座れんだろ」
「…まさか、リビングまで繋がってるとはな」
「ほんとからくり屋敷…」
『私の父が建築士をしていて、この家を設計する時に両親たちの理想を詰め込んだって言ってました』
「相当仲が良いんだろうなぁ、ツッキー将来俺たちもこんな家に住んだりしてね」
「僕、絶対鍵開けないけどいい?」
「それじゃ意味ないじゃん!」
しばらくしてカレーやその他のおかず数品が完成した。それぞれ席に着き、菅原先輩に促されてペットボトルを持った。