第21章 影に隠した秘密
菅原 side
「一番最初、ここのが欲しいって知らない女子に言われたんスけど」
「第二ボタンな」
「そん時にクラスのヤツから、それは大事な人にとっとけって言われたんで断って先に外しました」
「「「………」」」
「へえ…大事な人ね」
「なあ影山」
「はい?」
「それってボタンを外した時にはもう決めてたの?」
「何をスか?」
「つまり…第二ボタンを大事な人にとっとけって言われて、影山の頭にはもう鈴木が浮かんでたってこと?」
「?…そうっスね、他にいないんで」
え?
「ヒィイ…まじで!?」
「なんだよ山口」
「え、違う?違った?そういう意味じゃなかった!?」
わかる山口、俺もどっちかわからない。
「じゃあさ、影山は鈴木になんて言ってボタン渡したの?」
「なんて言ったっていうか…普通にあいつもボタン欲しがってたんで、やるっつって」
「は?」
「え?」
「そ…それで、鈴木はなんて?」
「別に礼言われたくらいスかね?なんかダンゴムシみてえに観察してました」
「ダンゴムシて…」
えぇ…なになにどういうことだ?
影山は鈴木を大事な人と認識してて、鈴木も影山のボタンを欲しがったってことはそれなりに特別な存在だと認識してる。なのに第二ボタンのやり取りはすげえアッサリしてて、挙げ句ダンゴムシ……んんん?
「ちょっとまって…俺わかんない」
「俺もわからないですよスガさん」
「この現代文、超難問じゃね!?」
「問1、ボタンを渡した時の影山の気持ちを文中から答えなさい…って?」
「文中に答えがねえんだよ、大地!!!」
「ははは、ありそうでなかったな」
「どうかしたんですか?」
「どうかしたんですかじゃねえよお前!」
「菅原さん?」
「あっ…」
影山を見るとその後ろに並んだ2人のベッドが目に入った。そして俺はふと先程のエプロン姿の鈴木を思い出してしまった。
──やべえ…っ!
「……影山」
「はい?」
「お前の理性、まじ尊敬するわ」
俺の言葉にキョトンとした影山は、何のことを言われているのかさっぱりわかっていなさそうだった。