第21章 影に隠した秘密
『…飛雄、もういいや』
「は?…まさかお前」
『うん、ありがとう飛雄』
飛雄は私たちが幼なじみであることを隠す本当の理由を言わずにこの場を凌ごうとしていた。私のわがままで隠していた関係なのに、それさえも言わず。
ツッキーが飛雄に向けた目を見て、飛雄に申し訳ない気持ちになった。もちろんそれは、嘘をついて騙してしまったツッキーやみんなに対しても同じ。
影に隠してきた秘密を話すのは怖い、でも私のわがままで大切な人たちを傷つけてしまうことのほうが何倍も怖いと思った。
「…じゃ、お邪魔しました」
『待って!』
私は真横を通り過ぎようとするツッキーの腕を掴んだ。その腕は飛雄の腕よりも骨が細くて長く華奢だった。
振り払われることのなかったソレにホッとする。
「…何?僕もう話すことないんだけど」
『あるの、私が』
「さっきは何も言わなかったくせに」
『…ごめん、ずっと嘘ついて傷つけて』
「もういいって、じゃあ」
『お願い聞いて!』
「………」
『私が影山くんにお願いして、私たちが幼なじみなことをずっと隠してもらってたの…だから影山くんは何も悪くない』
「…あっそ、それで?」
『私ね、もう傷つくのが怖くて……っでも、こうして隠すことで大切な人たちを傷つけるのはもっと怖いって気付いた…だから、ちゃんと話すから聞いて欲しい…ずっと隠してきた私たちのこと』
「………」
真剣に向き合おうとする私の声に気付いてくれたのか、ツッキーは体ごと私に向いてくれた。
『着いてきて』
私が飛雄の部屋に入ると、顔を合わせたみんなもゾロゾロと部屋の中へ入ってきた。最後にパタンとドアを閉めた飛雄は、心配そうに私を見る。
大丈夫、きっと大丈夫、
ありがとう、飛雄。
「…で、なに?」
『さっきツッキーはいくら幼なじみだってお互いの家に勝手に入ったりしないし、幼なじみの家の鍵なんて持ってないって言ってたよね?』
「うん」
『その理由はね、もう簡潔に言うけど…ここは影山くんの家でもあり、私の家でもあるの』
「……は?」
みんな、頭にハテナを浮かべて私を見ている。私は胸に手をあてて、スゥッと息を吸った。
『私と影山くん、同じ家に住んでるんだ』