第21章 影に隠した秘密
菅原 side
いやでも、俺としては2人が幼なじみだといえど合宿での一件はどうしたって疑問が残る。例え幼なじみだからって、手を繋いで同じ部屋で眠るなんてそんなの有り得ることなのか?
悶々と考えていると月島が静かに口を開いた。
「…あれ、話に着いていけてないの僕だけですか?」
「月島?」
「いや僕と山口も幼なじみですけど、さすがにお互いの家に勝手に入ったりはしないし、普通幼なじみの家の鍵なんて持ってなくないですか?」
「あっ…言われてみれば確かに」
「影山、さっきみんな入ったあとでちゃんと鍵かけてたもんな」
「それに、他人のフリしてまで幼なじみであることを隠す理由ってなんですかね?別に大したことじゃないでしょ、幼なじみなんて」
「…………」
俺の考えていた疑問とはまた別の視点だったけど、言われてみれば確かにそうだ。幼なじみなんてまぁまぁありふれた話だし、別にそこまでして隠すようなことじゃないはずだ。
だからこそ、月島の言うように何か隠さざるを得ない理由があるのかもしれない。
見つめ合う…よりも睨み合うのほうがしっくりくる月島と影山。
ホントこいつら笑っちゃうくらい仲悪いよな…。でも月島がそんなことを言い出す理由がなんとなく透けて見えて、こいつもここで納得したフリして引き下がれないんだなと月島の複雑な心境を察した。
「あ?別に理由なんかねえよ、それにお前と山口の普通が俺たちの普通とは限んねえだろうが」
「王様が言ったわけ?鈴木に黙ってろって」
「どっちだってお前には関係ねえだろ」
「関係ないってことはないでしょ、一応僕はチームメイトでしかもクラスメイトにも嘘つかれてたわけだから」
『!………っ、』
ずっと黙っていた鈴木の肩がピクッと跳ねた。その表情は俯いていて全てはよく見えないけれど、唇を噛み締めているように見えた。
「つ、月島…さすがに」
「結果的にはそうだったかもしれないけど、きっと何か理由があるんだろうからさ」
「え?理由はないって今この人が言ってましたけどね…まぁもういいです、僕帰りますね」
「ツ、ツッキー!?」
月島は部屋の中にカバンを取りに歩き出した。
それを見た鈴木は顔を上げて、影山に目線を合わせるように座り込んだ。