第21章 影に隠した秘密
月島 side
すぐさまパタリと閉じられたドア。
間違えた?
…そんなわけないだろ。
「…おい…嘘だよな?」
「今の、えっ…?」
僕も含め、みんな動揺が隠せていない。
口にしたいことは多分山ほどあるのにそれらがちっとも言葉にならなかった。
部屋の中を無機質に木霊する北一コール。もはやこの騒がしい声すら誰の耳にも届いていないことだろう。
それもそのはずだ、今目の前で起きているのは王様と鈴木が学校で並んで歩いているとかゼロ距離で立っているとかそんなレベルの話じゃない。だってここは王様の家だ。その家に鈴木がいるだなんて、普通じゃありえない。でもそれがありえてしまっているということこそが、2人が “ただの同級生” 以上の特別な関係性であることの証明だ。
…一体いつから?
人を好きになるのがどういうことなのかわからない、そう話していたのはつい最近の事だったはずだ。
じゃあどうして……
──まさかずっと嘘をついていた?
「…ッキー…、ツッキー?」
「え…なに?」
「顔色が悪い気がして…大丈夫?」
「別に普通だけど」
「そう?…ならいいんだけど」
煮え切らない山口の表情。
それが居心地悪くて、顔を隠すように胡座に頬杖をついた。
すると、ドッシーンと廊下からかなり大きめの音が聞こえた。
「!?」
「なに、どした!?」
「ちょっ、日向!見てこい!」
「ふぇっ、おれですか!?」
ドアの近くまで這い寄ってきていた日向はどぎまぎとしながら立ち上がった。そして、遠慮がちにドアを開けて顔だけを外に出した。
僕たちはその後ろ姿を見つめながら日向の言葉を待った。
「あ」
「…な、なにが見えたんだ?」
「影山が」
「影山が?」
「鈴木さんを」
「…鈴木を?」
「寝っ転がりながら抱き締めてます」
「「「はァ!?!?」」」