第21章 影に隠した秘密
月島 side
「……女?」
王様が血相を変えて部屋を飛び出して行ったかと思えば、何やら廊下で揉めている様子だった。王様に妹やお姉さんがいるなんて聞いたこともなかったし実際にはいるのかもしれないけど、僕はなんとなく今のコレがそれらとは違うんじゃないかと感じていた。
…だってさ、聞いたことあるよこの声。
「まじで!?影山のカノジョ!?」
「なんか騒いでるけど修羅場!?」
「俺たちが原因だったりして……」
嘘だろ…?
僕の思い浮かべた人物が先輩たちの言うソレなんて、どうしたって信じられない。
でも頭のどこかで、実はあの2人って意外と仲が良かったんじゃないかなんて思う自分もいる。
2人で自販機にいたこと、王様が髪に触れていたこと、時々距離感がバグること、合宿所の食堂でのこと、着ている服の匂いが同じなこと…。
いやいや…違う、普段特別仲が良いと思えないからこそそういうのが印象的に映っただけで、別にそれがあったからって2人が本当に仲が良いとは限らないはずだ、うんきっとそうだ、そうに違いない。
さざめくような心を落ち着かせるために、僕はそんなことを考えた。
なのに、そんな考えは波が砂の城を攫うように一瞬でかき崩されてしまった。
ガチャッ
『えっ…………』
「…………」
勢いよく開けられたドアの先にいたのは間違いなく僕の思い浮かべていた人物、鈴木本人だったから。