第21章 影に隠した秘密
「お疲れ様!」
「鈴木さん、今日はありがとう」
「また来月な!」
『はい、どうもありがとうございました!』
時間にして約1時間30分程。限られた時間の中で行われた講習会では、様々な状況下での審判ジャッジについて学ばせてもらった。
審判とは、常に冷静かつ公平で瞬時に正しい判断を下さなくてはならない。例え両チームの監督や選手からどのような訴えがあったとしても、審判は感情的になったり迷うことがあってはならないのだ。
それは副審やラインの判定を行う線審の意見が割れていたとしても同じ。最後は自分だけを信じてジャッジを下す。
言わば審判とは、試合を司る神。
誰も口を出すことの出来ない、
…いや、出させてはいけない絶対的な存在だ。
今日お世話になった佐々塚さんは24歳の若さでA級審判員の資格を取り、現在33歳。今は再来月に控えたアジアバレーボール連盟の国際審判員の取得に向けて頑張っているそうだ。
『……すごいな』
私は今日のことを思いながら、非常に満たされた気持ちでバスに揺られていた。
『あっ…』
もうすぐ家の近くのバス停に着くというところで、全くスマホを見ていなかったことに気付いた。
時刻は午後5時36分。
『…何時に帰る?』
飛雄からのLINEは随分前に送られたものだった。
私はバスを降りて家までの道を歩きながら返信をした。
《遅くなってごめん、もう着くよ!》