第21章 影に隠した秘密
「……羨ましいものだな」
『はい?』
「いや……それじゃあ始めようか」
佐々塚さんをはじめ、みなさんは胸の真ん中にワッペンを取り付けた。私は佐々塚さんの胸に付けられたワッペンに目を奪われる。
──あ、これ
『…A級審判員、ですか?』
「あぁ、わかるかい?」
『はいっ!もちろんです』
A級審判員は日本の主催する大会で、決勝の審判を務めることができる名誉のある資格だ。
「もし烏野高校が春高予選宮城県大会の決勝に勝ち進んだら、その主審は俺だ」
『!』
「審判の立場で鈴木さんに掛けられる言葉は少ないが、決勝コートで “待っているよ” 」
『…はい!』
私は佐々塚さんの強くも優しい目を見て、決意を込めて微笑んだ。