第20章 されど空の青さを知る
影山 side
「お前、あん時抱きしめられたって?」
『!』
美里はひどく焦った顔で俺を見た。
『…それは、』
「昨日はそれ以上のことされそうになってたんじゃねえのかよ」
『……』
俺が美里の元に辿り着いたとき、国見の体勢の目的はひとつしか無かったと思う。及川さんの時といい昨日といい間に合ったから良かったものの、こいつが男とあんな距離でいるのを見るのは正直かなりキツかった。
「もっとキキカンってやつを持て」
『…その通りだと思う。私ああいう時に体が固まって動けなくなるから、そうならないように注意するべきだった。影山くんの言うように危機感が足りてなかったよね』
「なあ鈴木さん、1個聞くけど」
『なに?』
「お前はそーいうことする相手、誰でも良いってわけじゃねぇんだよな?」
『当たり前でしょ!
…いつか、ちゃんと好きな人としたいよ』
「………」
『か…影山くんはどうなの?』
ほんのり顔を赤らめた美里が俺を見上げる。
「………」
俺は美里の顔に右手を伸ばした。
『な………わぶっ!』
赤い両頬を掴まれた美里は、頬と唇が中央に寄って茹でダコみたいな顔になった。
「俺もだ」
──「みんなの初恋を奪っちゃうことだよ」
この “初恋キラー” にまんまと奪われたってのかよ、俺は。
「………」
『はへははふん、はらひへ…』
「お前ずっとこんな顔してろよ、そしたら寄ってくるヤツもいなくなるだろ」
『むひゃいわらいえお』
「チッ」
俺はパッと手を離して歩き出した。
『えっなに、なんで、待ってよ!』
「うるせえ」
『えっ!?』