第20章 されど空の青さを知る
「ははっ…何その顔、超可愛い」
『く…国見くん、なんかキャラ変わった?』
「いや?俺は元々こんなだけど」
『だって可愛いとか…中学の時に1度も言われたことなかったし、そんなこと言うような人じゃないと思ってた』
「俺は、顔だけで鈴木を好きになったヤツと一緒にされたくなかっただけ。ホントはずっと思ってたよ、可愛いとか抱きしめたいとか…キスしてみたいとか」
『っ!…もうやめてよそんな冗談、だって私…』
「フッたのにって?」
私は俯いてコクリと頷く。
「冗談なんてひっでー…ずっと好きだった人のこと、簡単に忘れられるわけなくない?あぁでも鈴木は好きな人出来たことないんだったっけ」
『……』
「それなのに鈴木は今日俺の顔見た瞬間、顔赤くして目逸らしちゃったんだ…へぇ〜鈴木、俺のことフッたくせにね?」
『…………』
「今更男としてすげえ意識してくれて…たまんないんだけど。もしかしてこの間のこと、さすがの鈴木もなかったことに出来なかった?」
この間のこと…あの日、抱きしめられたこと。
…背中と頭に回された大きな手、
試合後で上がった体温、
汗で湿ったユニフォーム、
柔軟剤の香り、頬にふれた髪の毛……
「あのあとも、俺のこと思い出したりした?」
『……っ、』
ぶわっと顔に熱が集まってくるのがわかった。
「…鈴木、ほんとかわいーな」
すると国見くんはポケットから手を抜いて、長い腕を背もたれに伸ばした。驚いて思いがけず目が合うと、国見くんは私の目をじっと見つめながらゆったりとした動きで、徐々に距離を縮めてくる。
「…もし今ここで既成事実を作ってもう1回告ったら、鈴木は絆されてくれたりするのかな」
『既成…事実?』
「……キス、してみない?今ここで」