第20章 されど空の青さを知る
「鈴木」
『っ、なに?』
「今日部活あったの?」
『あ…うん、午前中だけね』
「ふーん、意外」
『土曜は午前練のことが多いよ』
「そうじゃなくてさ、鈴木って家に帰ったら制服とかすぐに着替えるタイプだと思ってたから。てか、烏野って土日の部活も制服じゃないとダメなの?」
『いつもはジャージで行くんだけど…今朝なんかボーッとして間違えて制服着ちゃったんだよね』
「へえー…でもそのお陰で俺は鈴木の制服姿が見れたし、ラッキーだったってことかな」
『そんな…っ、』
「それで?なにかあったの?」
パーカーのポケットに手を突っ込みながら、身体を傾けて私の顔を覗き込む国見くん。その視線から逃げるように、私は顔を逸らす。
『…なんもないよ?』
「だから、嘘つくなら上手くつきなって。今の鈴木、何かありましたって言ってるようなもんなんだけど」
『………』
「影山となんかあった?」
『!』
「うっそ、当たり?」
『……や、その』
「はあ…今のは分かりやすくても良いから違うって言って欲しかったな……で、影山と何があったの?」
『大したことじゃないよ、…喧嘩しただけ』
「ふーん…喧嘩しただけ、ね」
『うん…』
「喧嘩しただけで、鈴木は泣いちゃうの?」
『え?』
「喧嘩しただけでそんな顔するなんて、それって相手が影山だから?……すげえ妬けるんだけど」
『それ…どういう意味?』
「わからないの? “お前が好きだ” って意味だよ」
私が国見くんを勢いよく見ると、国見くんは吹き出すように笑った。