第20章 されど空の青さを知る
パパがあの写真を飛雄に送ったと聞いて、体が反射的に動いてしまった。あんな写真ひとつで飛雄が帰ってくるなんて思ってはいないけれど、ただとにかくもう少しの間、自分の気持ちを1人で整理したかった。
説明の出来ない複雑な感情だと思っていたものは、言葉にしてみれば案外分かりやすくて単純なものだった。
私…飛雄に頼ってもらえなかったことが悲しかったんだ。
私はいつも1番に飛雄を頼りにして、これまでに数え切れないほど甘えてきた。だからこそ、私に出来ることなら何でもしてあげたかったし、頼って欲しかった。
…でも飛雄が頼ったのは、出会って間もない谷地さん。谷地さんは可愛くていい子で、私みたいにきっと我儘は言わない頼りがいのある子なのだろう。冷静に考えてみれば、飛雄が谷地さんを選んだのは当然の選択だったのだと思う。
…でも何故か、飛雄が頼った相手が谷地さんだったという事実が、少しだけ私の心を苦しくさせた。
いつもの神社への道のり、ほんの少し遠回りのつもりで別のルートを歩く。熱を持った目は少し腫れぼったくて、どうか誰にも会いませんように、と心の中で小さく祈った。
少し先にコンビニが見えてきた。そこから出てきた人物の背格好に覚えがあった。
──嘘でしょ?
何の気なしに振り返ったその人は、私を視界に捉えて目を丸くした。
「…鈴木?」
会いたくないと思った時ほど出会ってしまうこの現象に、もう人間は名前を付けているのだろうか。