第20章 されど空の青さを知る
影山 side
「…はあ、はぁっ、ただいま!」
玄関を開けてリビングへ走ると、そこには俺と美里の両親が座って話をしていた。
美里の姿はない。
「あら飛雄、おかえり」
「すげえ汗…お前どっから走ってきたんだ?」
「おう飛雄、思ったよりも早かったな」
「っはぁ、父さんが…あんなLINE送ってくるからだろ!」
「ハハッ!帰るだろうとは思ったが、まさかこんなに息切らして帰ってくるとは思わなかったぜ」
「なあ、美里は?」
「その前に、お前今日どこ行ってたって?」
「は?マネージャー候補の、家だけど」
「女の、だろ」
「…別に、勉強教えてもらっただけだよ」
「いや、俺はお前のことを分かってるつもりだし、別にそれに対してどうこう言いたいわけじゃねえよ。ただ仮に、美里が同じ理由で男の家に行ってたらお前どう思うんだ?」
「ほらあの子は?ツッキーくん」
「ああよく話してるね、ツッキーくんのこと」
「はあ?…美里が、月島んちに?」
…なんだそれ、すげえ嫌だ。
「…すげえ嫌そうな顔」
「ふふふ、わかりやすい」
「飛雄、そういう想像力は大事だぜ?例え理由がどうであろうとな」
「ん、覚えとく……それより父さん、美里は?」
「知らん」
「はあ!?」
「いやホントなんだよ、お前にLINEしたって言ったら家飛び出してっちまって」
「………」
俺はすぐにスマホを取り出し美里へ電話を掛けた。すると、テーブルの上でスマホが震えた。《影山飛雄》の表示をみてすぐに切る。
「あ、これ美里のか」
「っ……探してくる、」
「行ってらっしゃい、気をつけてな」
俺は荷物を置いて、靴に足を突っ込む。普段なら靴紐を緩めてから履くが、今日は靴紐が結ばったまま無理やりねじ込んだ。
玄関を出て、心当たりのあの場所まで走り出した。