第20章 されど空の青さを知る
谷地 side
日向も影山くんから何かを感じ取ったのか、変に揶揄うようなことは言わなかった。でも、今度は突然の静寂に私が耐えられなくなる。
「そ、そういえば鈴木さんの幼なじみって他校のバレー部なんだっけ?試合したことあるの?」
「そう!…IH予選で俺たちが負けた青葉城西の国見ってヤツで、デカくてやる気なさそうなんだけど本気出したら超上手えの!そんで鈴木さん、昔からそいつの練習相手してるからあんなにバレー上手いんだって」
「へえーっ!鈴木さん、すごくバレーが上手なのにバレー部じゃないって話してて驚いたんだけど、そういう理由だったんだね」
「あーいいなあ、俺も鈴木さんと幼なじみだったらバレーもっと上手くなってたかな」
「…というか、鈴木さんが幼なじみってだけで…なんかすごいよね、大変そうだけど」
「な、色々羨ましい!…あ、でも」
「ん?」
「この前…そいつ鈴木さんにフられてた」
「あれ?…もしかしてこの前の話のって」
「そう、それ。すごかったんだぜ、お前のことが好きだ!って」
「みんなの前でなんてドラマみたいな告白だね!そっかぁ…鈴木さんは初恋キラーなんだろうなぁ」
「初恋キラーって?」
「みんなの初恋を奪っちゃうことだよ」
「ひぇーそっか、確かに鈴木さんが幼なじみだったら絶対好きになっちゃうよなあ…!幼なじみじゃなくてもモテモテだし」
「うんうん、この前他校からLINE渡されてたのもびっくりした」
「ちなみに影山は、鈴木さんたちと同じ中学なんだよ」
「え!じゃあ中学時代の鈴木さんを影山くんは見ていると…!」
「そう思うじゃん!?それがこいつ、鈴木さんのことを知らなかったとか言うんだぜ?信じらんないよな」
「えっ、全校生徒が知ってそうなのに!」
「だよな!…あれ、もしかして鈴木さんって影山の幼なじみ知ってる?」
「どうなんだろう」
「どうなんだよ、影山」
「……さあ…知らねえけど」
「影山の幼なじみってどんな子なんだろ…写真とかねえの?」
「………んなもん、ねえよ」
あれ、なんか影山くんが居心地悪そうな顔してる…。
その時、誰かのスマホのバイブ音が鳴った。