第20章 されど空の青さを知る

谷地 side

日向が騒ぐのも分かるなぁ、それくらいに影山くんの言い方は壊滅的だった。でも昨日からそれを引きずってるってことは、影山くんも幼なじみさんのことをどうでもいいとは思っていないんだろうなと思った。

そもそも、影山くんがこんな話を私たちにしてくれたってことは、早く解決の糸口を見つけたいってことだよね、きっと。


「…えっと影山くん、まず前提としてその幼なじみさんの教え方は下手じゃなかったってことだよね？それをその子がずっと勘違いしてた、的な」

「そ、スね…正直あんま記憶にないスけど、教え方は丁寧過ぎるくらいだったような」

「そんな丁寧に教えてくれたのに、お前ってヤツは！」


「ち、ちなみに、近くにいると集中できないっていうのは、どういう？」


私がそう聞くと、頬杖をついた影山くんは黙ってそっぽを向いた。



「………」


「影山くん？」




「なんか、すげえ近くて」



「うん？」




「…声も喋り方もいつもとちげえし、」



「………」





「時々、目ェ見てくんのとか…もう無理だった」






…あれ？影山くんもしかして、
その幼なじみさんのこと…






「影山、その子のこと好きなの？」





い、言っちゃった！
絶対言い合いになる…！


「っひ、日向！そういうことは言っちゃ」



「…別に」








──あ、







「別に、そういうんじゃない」



静かにそう言った影山くんの横顔は大きな手に隠れていたけれど、ほんの少しだけ赤く染った耳が心の内を表していた。


いつものぶっきらぼうな物言いとか、鋭い目付きとか…そういうのを忘れてしまうくらい、目の前の影山くんは、まるでとても大切な人を思い浮かべるような優しい目をしていた。




「…影山くん、」



「？」



「その幼なじみさんも、影山くんと早く仲直りしたいって思ってると思うよ」



「………」




「早く仲直り出来るといいね」




「…ああ」